赤ちゃんのおしりの進化

お読みいただき、ありがとうございます。本八幡 風の整体院 岩田です。人類はほかの動物よりも高度な二足立位、二足歩行を獲得したにもかかわらず、生まれてすぐには立ち上がれないようにできています。これはかの有名なドイツの生物学者であり、哲学者でもあったエルンスト・ヘッケルが唱えた「個体発生は系統発生を繰り返す」という言葉の通り、海の生物が陸の生物に進化し、さまざまな進化を経て二足歩行を獲得した人類誕生への流れと密接に関係しているのです。人間の赤ちゃんは、生まれる前はお母さんの子宮の羊水の中で生活しています。これは系統発生で言えば、海の生物と同じです。この海の生物から陸の生物への進化と同様なのが、お母さんのおなかから生まれる瞬間なのです。このときはまだ立てません。なぜなら赤ちゃんは約10ヶ月間、羊水の中で浮力のある環境にいたため、水中で身体を動かすための推進筋は発達していても、身体を垂直に立ち上がらせる抗重力筋は、まだ十分に発達していないからです。しかし、赤ちゃんは生まれた瞬間から抗重力筋のトレーニングを開始します。生まれたとき、赤ちゃんは大声で泣いていますね。赤ちゃんは羊水内で呼吸はしていませんが、これは生物の進化で言えば、水中のえら呼吸から肺呼吸に変わった瞬間です。このときから赤ちゃんは、呼吸筋であり抗重力筋のベースでもある横隔膜や腹横筋のトレーニングを始めるのです。これはヒトの遺伝子情報に組み込まれたプログラムなのです。姿勢に関しても、赤ちゃんは仰向けに寝るだけの状態から横向きになり、寝返りを打てるようになると、うつ伏せの姿勢もできるようになります。さらに、四つん這いができるようになるとハイハイを始め、座ることもできるようになり、そして膝立ちからつかまり立ちを経て、ついに立って歩くことができるようになります。このように約5億年の歳月をかけた人類の進化の過程を赤ちゃんは約1年かけて再現し、二足歩行に必要な抗重力筋を強化するのです。赤ちゃんが目指すゴールは二足立位、二足歩行。これを実現するためにはおしりの筋肉という最強の抗重力筋が不可欠です。