コワい「隠れ疲労」

お読みいただき、ありがとうございます。本八幡 風の整体院 岩田です。日本の栄養ドリンク消費量は世界トップレベルですが、1962年に発売されて以来、臨床試験で疲労回復効果が実証された製品はありません。よく耳にするタウリンですが、肝臓に働きかける作用は知られているものの、抗疲労効果の証拠はないのです。2011年には、アメリカのマイアミ大学の研究チームが「栄養ドリンクには高濃度のカフェインやタウリンなどが含まれており、治療効果が認められない上に、一部の子供には健康被害をもたらす可能性がある」と指摘しています。日本では炭酸飲料に分類され、このところ国内で急速に普及しているエナジードリンクですが、こちらも同様です。日本の厚生労働省に相当するアメリカ合衆国保健福祉省に属する食品医薬品局(FDA)は、2013年にアメリカで発売されている栄養ドリンクとエナジードリンクの安全性についての調査を開始しました。つまり、どちらも「抗疲労効果なし」「安全性に疑問あり」とみられているわけです。さらにコワいのは、これらのドリンクの覚醒や高揚をもたらす成分による疲労の「マスキング作用」です。「疲れているのに疲れていないと感じる」…これは他の動物と比べて脳の前頭葉が発達した、人間だけに見られる現象です。「疲労」を起こすのは脳の自律神経の中枢なのですが、「疲労した」という情報を収集して「疲労感」を自覚させるのは前頭葉にある眼窩前頭野という部分なのです。前頭葉は「意欲や達成感の中枢」と呼ばれています。興奮すること、達成感を感じられることなどがあると、前頭葉が眼窩前頭野の発する疲労感を消し去ってしまうのです。この「疲労感のマスキング」が招く最悪の結果が、過労死です。