「かゆい」より「痛い」が優先

お読みいただき、ありがとうございます。本八幡 風の整体院 岩田です。脳は応用が利くようで、結構頑固で融通が利かないところもあります。例えば、複数の刺激が同時に与えられると、各感覚に優先順位をつけて、優先順位が高いものだけを情報処理します。体性感覚(皮膚感覚)の場合には、一番上位にくるのは関節位置覚です。つまり、運動をする時には必ず関節が動きますので、その情報が関節位置覚として脳に伝えられます。次が触覚と振動覚です。その次が痛覚や温度覚で、かゆみは一番下位になります。したがって、運動(関節位置覚)は痛みを抑制します。サッカー、ラグビー、バスケットボールのように、試合中はほとんど動きっぱなしのスポーツでは、試合中にケガをしても、あまり痛くありません。試合後に急に激しく痛くなり、病院に行ったら重傷で入院した、といったことも珍しくありません。現在は、その原理を応用して、慢性痛に悩む患者さんに運動療法が行われています。積極的に、ただし無理のない程度に、全身運動をすると、驚くほど効果がある患者さんも少なくありません。痛い場所の運動ではなくても効果があります。ですから、全身運動、例えばスロージョギングや水泳にも鎮痛効果があります。触覚も痛覚より優先順位が上ですので、同時に与えると、痛みは抑制されます。子供が痛がるところを、お母さんが「痛いの痛いの飛んでけー」と言って触るのは、科学的には非常に理にかなった方法です。かゆみは一番下位ですから、運動も触覚も効果的です。みなさんは、かゆいところを叩いたり、爪で十字をつけたりしませんか?これは痛みを与えることによりかゆみを抑制しているのです。熱いもの、例えば、タバコの火をかゆいところに近づけても効果があります。痛みを感じるほどの冷刺激も同様に効果的です。かゆいところに保冷剤を置くと、この優先順位の原理と、保冷剤がかゆい部分の炎症を抑えてくれるので、かゆみが軽くなるのです。炎症がそれほど強くない場合は、かゆい場所以外のところに保冷剤を置いてもかゆみは抑制されます。