お読みいただき、ありがとうございます。本八幡 風の整体院 岩田です。一昔前までは、筋肉という器官は「体を動かすためだけの存在」とされてきました。人間の運動や活動をコントロールしている「主人」は脳であって、筋肉は「召使い」として主人の言うことを聞いて、言われるままに動くだけの存在にすぎないとされてきたわけです。ところが1990年代あたりから研究が進み、筋肉を使って運動すると、脳にいろいろな物質が分泌されることが明らかになってきたのです。こうしたメカニズムの研究が進むにつれ、筋肉は脳に対して指令を出すようなこともしている存在なのではないかということになってきました。筋肉は単に脳の命令を聞いて動いているだけでなく、自分のほうからも脳への働きかけをさかんに行っているわけです。こうした働きかけは、運動などで筋肉を収縮させるたびに「脳を刺激する物質」を分泌することによって行われています。筋肉収縮により分泌される物質は、現在わかっているだけでも約30種類あって、「マイオカイン(筋肉由来内分泌因子)」と総称されています。そして、筋肉の収縮で分泌される物質のなかでも、とりわけ注目を浴びているのがBDNFです。BDNF(脳由来神経栄養因子)は、脳内で細胞の「肥料」のような役割をするタンパク質で、神経細胞の新生や再生、シナプスの形成を促進することがわかっています。運動をして筋肉を収縮させると、この「脳の肥料」がさかんに分泌されることになるわけです。また、BDNFが増えると、記憶中枢である海馬が肥大して、記憶力や学習力が高まるという研究が報告されています。他にも、情動のコントロールや摂食行動とのつながりを示す研究もありますし、うつ病やアルツハイマー病を防ぐ作用があることを示唆する研究もあります。現在、多くの研究者が、このBDNFこそ脳の力を高める物質なのではないかと、着目し研究を進めてきているのです。
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