よく噛むと脳が働く

お読みいただき、ありがとうございます。本八幡 風の整体院 岩田です。子供のころ、「ものはよく噛んで食べなさい」と言われたことはないですか。同じようなことを言われた経験がある方は多数いらっしゃると思います。脳にとって「ものをよく噛む」ということは非常に大切なことです。唾液のなかには「神経成長因子」というタンパク質がたくさん含まれています。神経成長因子は、その名のとおり、神経を成長させる(神経の軸索を伸ばす)神経伝達物質の合成を促進する、傷ついた神経細胞を回復させる、神経細胞の老化を防止するなどの働きがあります。ものをよく噛めば唾液の分泌は増え、当然、そのなかに含まれる神経成長因子もたくさん分泌されるということになります。分泌された神経成長因子は脳に働いて脳の機能を向上させると考えられます。「ものをよく噛む」のに重要な働きをしているのが歯です。歯がなくなると、十分に食物を噛むことができなくなり、唾液の分泌も少なくなります。唾液の分泌減少にともなって、神経成長因子の分泌も少なくなるのです。最近の研究で、「歯の本数が少ない人はアルツハイマー病になりやすい」という報告があります。また、残っている歯の本数が少ないほど脳の萎縮が進んでいるという結果も出ています。疫学調査でも、正常な本数の歯がある人と比較して、歯を失うと認知症の発症率が約2倍になっています。実験的にも、奥歯を抜いたマウスの群は、海馬の神経細胞数が減少し、学習・記憶能力が低下することが明らかになっています。このように、歯を大切にし、歯がない人は入れ歯を入れて、よく噛んで食事をすることは、脳を保護して脳の機能を維持・向上させるために極めて大切なことであると思われます。どのような根拠で生まれたかはわかりませんが、昔の言い伝え・教訓・ことわざは、非常に理にかなったものが多いとつくづく感じます。