いくつになっても「海馬」の体積は増える

お読みいただき、ありがとうございます。風の整体院 岩田です。「脳の細胞は大人になったら、あとはもう減るだけ」と、当然のように誰もがそう思ってきました。脳医科学の世界でも、脳の神経細胞は加齢とともにどんどん減る一方で、もう新しく生まれないと思われてきたのです。しかし、実際はそうではなかったのです。1998年、脳の世界において天動説が地動説に塗り替えられるような発見が、アメリカの研究者によって発表されました。記憶や脳の中枢を担う海馬だけは、いくつになっても神経細胞が新しく生まれ、海馬の体積を増やすことがわかったのです。つい、十数年前の出来事です。実験は余命短いガン患者さんの、死後の解剖までの同意と協力によって行われました。ガン細胞が増える時に赤い色を放つ薬品の投与を行い、死後直後に脳の解剖を行ったところ、海馬の神経細胞が増えている事実をつきとめたのです。この世紀の発見は、「皆さんのためにお役に立てるのなら」と協力をしてくださった多くの患者さんたちのたまものでした。その後、さまざまな実験が世界中で行われるようになり、海馬の脳細胞はいくつになっても生まれ、その体積の増えることが立証されてきたのです。このような興味深い報告もあります。ロンドンの道路はとても複雑で、タクシー運転手の試験が難しいことでも有名です。イギリス人から見ると、「こんな入り組んだ道に迷うことなく自由自在にどこにでも行ける運転手の脳は、普通の人と絶対に違う!」という思いがあるようです。そこで、あるイギリスの研究者が複数のタクシー運転手の脳を調べたところ、やはり「海馬」の体積が増えていたのです。さらにベテランになればなるほど、この海馬の体積は大きかったという報告がされています。海馬はアルツハイマー型認知症やうつ病で最も障害を受けやすい場所であり、海馬が損傷すると記憶という大切な働きが失われます。この「人間らしさ」にとって重要な海馬の神経細胞が、高齢になってからも増殖して、しかも海馬そのものの体積をふやす・・・これは、脳医科学の常識が破られる大発見であり、まさに、高齢になっても「脳には輝かしい未来がある」ことを意味します