「海馬」が記憶をコントロールする

お読みいただき、ありがとうございます。風の整体院 岩田です。「前頭葉」以外にも人間らしさをつかさどる大切な領域があります。それは「海馬」です。「海馬」は「記憶全体をコントロールする」という大切な働きを持っています。側頭葉の奥深いところにあり、タツノオトシゴ(英語でSea「海」horse「馬」)のような形をしていることから海馬と名付けられました。よく「記憶力が良い」とか「記憶力が悪い」とか一言で「記憶力」を片付けることが多いのですが、実は人間の記憶はそんな単純なものではありません。人間の記憶のメカニズムは大変におもしろく、いくつかの記憶をつかさどる領域が複合的に関係しあって、その機能を果たしているのです。10秒から20秒くらいの記憶を「短期記憶」といいます。例えば調べた電話番号を瞬時に記憶して、電話をかけるときがあります。ですが、少し時間がたった後に、この番号を思い出そうと思ってもなかなか出てきません。このように、持続性がなく、時間の経過とともに失われてしまう記憶が、この「短期記憶」です。これに対し、長い間保存されている記憶を「長期記憶」といいます。この「長期記憶」のうち、家族や友人の名前や誕生日、言葉の意味や一般の雑学の知識などの記憶を「意味記憶」といいます。また自分の日常に起こったことで、先週の土曜日に誰とどこに行ったとか、昨日の夜何を食べたとか、また幼い頃の思い出の記憶などを「エピソード記憶」といいます。そしてもうひとつ、スポーツやダンス、楽器演奏などのように体で覚える記憶は、「手続き記憶」とよばれています。これら数種の記憶の働きと深く関わりを持っているのが、「海馬」なのです。海馬は、「短期記憶」を受け取り、保存の必要性を判断したり整理整頓したりして、「長期記憶」を担うそれぞれの領域に移動、保存させる働きがあります。パソコンに例えると、情報を得た後、必要のないと思ったものは消去し、とっておいた方がよいと思ったものは項目ごとにファイルにまとめ、ハードディスクに保存するといった感じです。海馬が働いているときは電気の波が生じ、感情をともなう場合はその波が大きくなることがわかっています。昔の記憶で楽しかった思い出などが、他の記憶より強く残っているのは、海馬がより大切なものとして「長期記憶」にしっかり残しているからです。まさに海馬が記憶の重要性を判断し、整理しているのです。そして、長期記憶として保存されている情報が必要になった時、それを引き出す、つまり「思い出す」という働きを担当しているのも、海馬なのです。このように海馬は、記憶全体をつかさどる「記憶の司令塔」として、きわめて重要な役割を果たしていると考えられています。